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みさごのすし
みさごの鮨
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《みさごの鮨(みさごのすし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,198 字 · 47 頁
こうした場所と、身の上では、夜中よりも人目に立たない、静な日南の隙を計って、岐路をあれからすぐ、桂谷へ行くと、浄行寺と云う門徒宗が男の寺。……そこで宵の間に死ぬつもりで、対手の袂には、商ものの、(何とか入らず)と、懐中には小刀さえ用意していたと言うのである。
上前の摺下る……腰帯の弛んだのを、気にしいしい、片手でほつれ毛を掻きながら、少しあとへ退ってついて来る小春の姿は、道行から遁げたとよりは、山奥の人身御供から助出されたもののようであった。
左山中道、右桂谷道、と道程標の立った追分へ来ると、――その山中道の方から、脊のひょろひょろとした、頤の尖った、痩せこけた爺さんの、菅の一もんじ笠を真直に首に据えて、腰に風呂敷包をぐらつかせたのが、すあしに破脚絆、草鞋穿で、とぼとぼと竹の杖に曳かれて来たのがあった。
この竹の杖を宙に取って、さきを握って、前へも立たず横添に導きつつ、くたびれ脚を引摺ったのは、目も耳もかくれるような大な鳥打帽の古いのをかぶった、八つぐらいの男の児で。これも風呂敷包を中結えして西行背負に背負っていたが、道中へ、弱々と出て来たので、横に引張合った杖が、一方通せん坊になって、道程標の辻の処で、教授は足を留めて前へ通した。