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みさごのすし
みさごの鮨
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《みさごの鮨(みさごのすし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,198 字 · 47 頁
柳のもとには、二つ三つ用心水の、石で亀甲に囲った水溜の池がある。が、涸れて、寂しく、雲も星も宿らないで、一面に散込んだ柳の葉に、山谷の落葉を誘って、塚を築いたように見える。とすれば月が覗く。……覗くと、光がちらちらとさすので、水があるのを知って、影が光る、柳も化粧をするのである。分けて今年は暖さに枝垂れた黒髪はなお濃かで、中にも真中に、月光を浴びて漆のように高く立った火の見階子に、袖を掛けた柳の一本は瑠璃天井の階子段に、遊女の凭れた風情がある。
このあたりを、ちらほらと、そぞろ歩行の人通り。見附正面の総湯の門には、浅葱に、紺に、茶の旗が、納手拭のように立って、湯の中は祭礼かと思う人声の、女まじりの賑かさ。――だぶだぶと湯の動く音。軒前には、駄菓子店、甘酒の店、飴の湯、水菓子の夜店が並んで、客も集れば、湯女も掛ける。髯が啜る甘酒に、歌の心は見えないが、白い手にむく柿の皮は、染めたささ蟹の糸である。
みな立つ湯気につつまれて、布子も浴衣の色に見えた。
人の出入り一盛り。仕出しの提灯二つ三つ。紅いは、おでん、白いは、蕎麦。横路地を衝と出て、やや門とざす湯宿の軒を伝う頃、一しきり静になった。