輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
みずぐるま
みずぐるま
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《みずぐるま》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 27,077 字 · 54 頁
「はい、お、お――」
若尾はそう云いかけたとたん、豊をみつめたまま急にべそをかき、ぽろぽろと手放しで涙をこぼした。豊は驚いて若尾の顔を覗いた。
「どうなすったの若さん」
「なんでもありません」涙をこぼしながら若尾は首を振った、「なんでもないんです、済みません、ただ――お母さまって呼ぶのは生れてから初めてだもんで、うまく口から出てこないんです」
「いいのよ」豊は眼をそらしながら云った、「もうすぐに馴れますよ、さあ、まいりましょう」
豊は、そっと若尾の手を握ってやった。
若尾は元気になり、家人と馴れていった。着物や帯が出来て来、髪も武家ふうに結うと、自分から努めて言葉を改め、行儀作法も習うようになった。もちろん長い習慣がそうすぐに直る筈はない、うっかりすると廊下を走ったり、乱暴な口をきいたり、庭で樹登りをしたりした。平右衛門も豊もあまり小言は云わなかった。和次郎もそんな若尾が好ましいようすで、いつも笑いながら見ているだけであった。
弘田家には家扶の渡辺五郎兵衛と、ほかに家士が七人と、下僕と下婢とで五人、馬を三頭飼っていた。若尾は侍長屋のほうへは近よるなと云われ、内庭の仕切からそっちへは決してゆかなかった。