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みずぐるま
みずぐるま
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《みずぐるま》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 27,077 字 · 54 頁
若尾は弘田家の生活に慣れていった。元気すぎるほど元気で、賑やかな性分だから、母の心持もまぎれるらしい、その部屋からよく笑い声が聞えて来るし、顔色もよくなるようであった。これは平右衛門にとってかなり意外だったようで、あるとき彼は和次郎に云った。
「おまえの云うとおりだったな、私はまた深江に似ているので、却って悲しがりはしないかと思ったのだが」
「母親というものは娘を欲しがるそうですから」
「あの娘もいい気性だ」と平右衛門が云った、「ことによると儲けものかもしれないね」
和次郎はそのとき父に質問しようとして、口まで出かかったのだが、ついに云いだす勇気はなかった。
――姉さんは、どうして自殺したのですか。
彼はそう訊きたかったのである。
姉の自殺した理由は不明であった。ふだんからおとなしく、無口で、ひっそりとした人であった。そんな性質に似あわず、芸ごとは不得手で、学問と武芸が好きであった。ことに磯野門の薙刀では、三人の一人に数えられていた。それが二年まえの五月、十九歳で遺書も残さずに自殺したのである。――そのちょっとまえに縁談があった。相手は中老の伊原要之助という者で、老職の松平主膳を仲介に申込んで来た。