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わがあいするしじんのでんき(さん)
わが愛する詩人の伝記(三)
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《わが愛する詩人の伝記(三)(わがあいするしじんのでんき(さん))》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,406 字 · 22 頁
かれは愛人の家でも朝から酒にしたしみ、泊りこむこともあった。母親おもいのかれが泊りこむということも、よくよくの愛情に惹かれていたものであろう。父からうけた遺産は母親に委せ、それには一銭も手を付けなかった彼は、外からは乱次のない男に見えていても、母親を悲しませたことは一度もしていない、彼はいつも正気を持って酒の中であぶあぶやっていて、そのために遺産に手を付ける男でなかったのだ。
その愛人は間もなく病死したが、身寄りのない人らしく、かれは妹むこの佐藤惣之助に葬儀万端をしてもらい、彼自身もうそ寒そうに愛人のまくらべに坐っていたことを思うと、萩原のくらし向きも情事のことでは複雑に何時も入りみだれていて、「抜書ノ二」のような意味の判らない物も書いていた。頭のよい人であったが此の「抜書ノ二」は文脈自らくずれていて、宿酔のみだれが仕事にくいこんでいるようであった。私は佐藤にかれの愛人は美人かと羨ましそうに問ねると、いやはや美人とか何とかいう女じゃないよと笑って言い、併し善良この上なしの人でね、そこに萩原は嘗てないものを見付けていたんだと佐藤は言った。私は何も彼も判るような気がし、彼女の死を傷んだ。