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わがまち
わが町
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《わが町(わがまち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 93,840 字 · 186 頁
「これもみな、うちに甲斐性が無いさかい……」
と、しょげかかる君枝を押えて、わざと、歳はとってもやっぱり「ベンゲットの他あやん」は元気でんなあと微笑んで見せ、
「それじゃ、何ですか、今でもやっぱり人間はからだを責めて働かな嘘やという主義は、守ってはるんですなあ」
と、君枝をかばう口調になった。
「――そう言えば、僕だって、他あやんのあの口癖はときどき想いだしましたよ。いや、げんに今だって……」
自分はからだ一つが資本の潜水業が仕事で、二十二の歳からこの道にはいり、この七年間にたいていの日本の海は潜って来、昨日から鶴富組の仕事で、大阪の安治川へ来ているのだと、次郎は語った。
「……もっとも、こんどのはたいした仕事じゃなく、お話にならんくらいのちいさな船の解体で、たいして乗気じゃなかったんだが、しかし大阪ときくと懐しくてね、ついふらふらと来てしもたわけですよ」
次郎は君枝にどの程度の親しさで語って良いか、迷っているような言葉づかいであった。
が、君枝はざっくばらんな言い方に頼もしさを感じ、ふとまじる大阪訛りになつかしさをそそられ、丁寧な口調の出る時は何か赧くなった。