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わがまち

わが町

織田 作之助

線上閱讀織田 作之助《わが町(わがまち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 93,840 字 · 186 頁

青空文庫

「あんた、なんぜ、手紙くれへんかってん。帰るなら帰ると……」

お鶴の髪の毛は、油気もなくばさばさと乱れて、唐辛子の粉がくっついていた。

唐辛子の刺戟がぷんと鼻に眼に来て、他吉は眼をうるませた。

「出せ言うたカテ、出せるかいな。わいに字が書けんのは、お前かてよう知ってるやろ。亭主に恥かかすな」

他吉はわざと怒ったような声で言い、

「――しかし、大阪は寒いな」

と、初枝のかかえている火鉢の傍へ寄った。

3

翌日から、他吉がひとりで夜店へ出て、七味唐辛子の店を張った。

場割りの親方が、他吉を新米だと思ってか、

「唐辛子はバナナ敲きの西隣りや」

と、いちばんわるい場所をあてがうと、他吉はいきなり「ベンゲットの他あやん」の凄みを利かせて、良い場所へ振りかえて貰ったが、

「ああ、七味や、七味や、辛い七味やぜ、ああ、日本勝った、日本勝った、ロシヤ負けた。ああ、七味や、七味や!」

普通爺さん婆さんがひっそりと女相手に売っている七味屋に似合わぬ、割れ鐘のような掛け声をだしたので、客は落ち着いて、七味の調合にこのみの注文をつけることも出来ず、自然客足は遠ざかった。

招き猫の人形みたいに、ちょこんと台の上に坐って、背中を猫背にまるめてごしごし七味を混ぜていると、いっぺんに精が抜けてしまい、他吉はベンゲットのはげしい労働がかえって