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わがまち

わが町

織田 作之助

線上閱讀織田 作之助《わが町(わがまち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 93,840 字 · 186 頁

青空文庫

「あんた、辛気くさいお子オやなア」

もう遊んでくれなかった。

「通らんせエ

通らんせエ

横丁の酒屋へ酢買いに

行きは良い良い

帰りは怖い

ここは地獄の三丁目」

子供たちの歌を背中でききながら、すごすご路地へ戻って来ると、〆団治は不憫だと落語を聴かせてやるのだった。

しかし、君枝は笑わなかった。

「わいの落語おもろないのんか」

〆団治はがっかりして、

「――ええか。この落語はな、『無筆の片棒』いうてな、わいや他あやんみたいな学のないもんが、広告のチラシ貰(もろ)て、誰も読めんもんやさかい、往生して次へ次へ、お前読んでみたりイ言うて廻すおもろい話やぜ。さあ、続きをやるぜ笑いや」

そして、皺がれた声を絞りだした。――

「さあ、お前読んだりイ」

「あのう、えらい鈍なことでっけど、わたいは親爺の遺言で、チラシを断ってまんのんで……」

「えらいまた、けったいなもん断ってんねんなあ。仕様(しや)ない。次へ廻したりイ」

「へえ」

「さあお前の順番や、チラシぐらい読めんことないやろ。読んだりイ」

「大体このチラシがわいの手にはいるという事は、去年の秋から思っていた。死んだ婆(ば)さんが去年の秋のわずらいに、いよいよという際になって、わいを枕元に呼び寄せて、――伜お前は来年は厄年やぞ。