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わがまち

わが町

織田 作之助

線上閱讀織田 作之助《わが町(わがまち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,869 字 · 52 頁

青空文庫

そういう心掛けやさかい、あんたはいつまでも前座してんならんねやぜ。――なあ、君ちゃん、そやろ?」

羅字しかえ屋の婆さんはもう歳で声が低かった。それに、丁度その時君枝は水道端の漆喰の上にぺたりと跣足になって、しきりに足を洗っていたところ故、水の音が邪魔になって、羅字しかえ屋の婆さんの声が聴きとれなかった。水道端の裸電灯の鈍いあかりが君枝の足を白く照らしていた。

羅字しかえ屋の婆さんは、君枝が返辞せぬので、

「君ちゃん、あんたいつまで足洗てなはんネ。水は只やあらへんぜ。冷えたらどないすんねん。」

「そない言うたかて、ええ気持やもん。」

と、君枝は両足をすり合わせながら、「明日はまた一日立ちづくめやさかい、マッサージして置かんと……。」

しゃがみながら、ふと空を見ると、星空だった。君枝はきんきんと、

「〆さん、あんたアンドロメダ星座いうのん知ったはる?」

「なんや? アンロロ……? 舌噛ましイな。根っから聴いたことないな。」

「ほな、南十字星は……!」

「えらいまた、おまはんは学者やねんなア。」

「そら、もう……。」

と、君枝は足を拭きながら、ぺろッと舌を出し、明日の夕方は、中之島公園で次郎に会うのだ。