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イグアノドンのうた
イグアノドンの唄
中谷 宇吉郎
線上閱讀中谷 宇吉郎《イグアノドンの唄(イグアノドンのうた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,469 字 · 21 頁
カインの末裔の土地
カインの末裔の土地
終戦の年の北海道は、十何年ぶりの冷害に見舞われ、米は五分作か六分作という惨めさであった。豊作でさえ米の足りない北海道のことであるから、この年の冬は、誰も彼も皆深刻な食糧危機におびやかされた。
それにこの冬は、例年にない珍しい大雪であった。毎日のように、暗い空からは、とめどもなく粉雪が降りつづき、それが人々の生活の上に重苦しくおおいかぶさっていた。この雪に埋れた不安な生活の上に、陰鬱な日々がただ明け暮れて行くのを、じっと我慢して春を待つより仕方がなかった。
私たち一家は、この冬を、羊蹄山麓の疎開先で送った。此処は有島さんの『カインの末裔』の土地であって、北海道の中でも、とくに吹雪の恐ろしいところである。「吹きつける雪のためにへし折られる枯枝がややともすると投槍のように襲って来た。吹きまく風にもまれて木という木は魔女の髪のように乱れ狂った」というのは、有島さんの有名な描写である。この荒涼たる吹雪の景色は、今日も少しも変らない。そしてこの無慈悲な自然の力に虐げられている人間の姿もまた、往年の名残りを止めている。
終戦の年の冬は、この自然の猛威の外に、今一つ食糧危機という恐ろしい脅威が加わっていた。