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カストリこうじつろく

カストリ侯実録

久生 十蘭

線上閱讀久生 十蘭《カストリ侯実録(カストリこうじつろく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,619 字 · 31 頁

青空文庫

と慰めると、太子は虫の鳴くような声で、「Je veux mourir(死にたい)」とつぶやいた。

翌廿八日、ロベスピェール外九十三人、靴工アントアンヌ・シモンも含め、断頭台へおのれらの血を報償した。

バラッス子爵はルイ・カペエ(ルイ十六世の卑称)の息子に身体を洗わせ、医師の診察を受けしめ、猶、居住を移し、衣服と寝台を与える請願を国会へ提出した。当時としては甚だ勇気の要る行為だったが、許可された。但し暗室から出すことだけは拒絶された。

バラッス子爵は、翌日医師ジュウル・デゾールを連れてタンプルへ行き、雑役に命じて太子の身体を洗わせ、能うかぎり暗牢を清潔にさせた後、マルチニック島生れのジャン・ローランという殖民地白人にゴオマンという下役をつけ、二人を専任の附添人に任命した。

この頃から太子は頑固な沈黙を持続するようになった。十二月十九日、ミショウ、ラチュウ、ルベルションの三人の議員が暗牢を訪問したが、太子は一言も口をきかず、唖になったか聾になったかと思わせた。

その年も終り、翌四十五年三月末、ローランとゴオマンが辞任し、エチアンヌ・ラーヌという男が附添になった。