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ガラマサどん
ガラマサどん
佐々木 邦
線上閱讀佐々木 邦《ガラマサどん》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 頁
「警察でも此奴に相違ないと言う。しかし考えて見ると無理もない。当時世話になっていた弁護士が大阪へ移ってしまって、我輩は木賃宿を泊り歩いた果、その三四日全く路頭に迷っていたんだから、風体が如何にも宜しくない」
「社長にもそんな時代がおありでしたかなあ」
「あの時がどん底だった。掻っ払いと間違えられたんだから、行くところまで行ったんだね。窮すれば通じる。もう転機が来ていた。人間の運命って奴は実に妙なものだよ。我輩の今日をそれからそれと手繰り戻ると、京橋際のあの共同便所に辿りつく」
と社長は四十年昔の発祥地を懐しむようだった。
「蛟龍竟に雲雨を得ましたな?」
「いや、未だ/\前途遼遠だ。紙入の中に名刺があったので、夕刻、落し主が呼び出された。松本君、誰だったと思う」
「私の祖父です」
「然うさ」
「はゝあ」
と私は初耳だった。松本さんは親の代からの関係で、無能にも拘らず、秘書を勤めていると聞いたが、詳しいことは知らなかった。
「君、松本君のお祖父さんは建築の請負人で、ナカ/\景気が好かったんだよ。その紙入に千円からの金が入っていた。盗まれたのでなくて、落したということが分ると、我輩の嫌疑も晴れた。