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ジストマたいじのはなし

ジストマ退治の話

中谷 宇吉郎

線上閱讀中谷 宇吉郎《ジストマ退治の話(ジストマたいじのはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,042 字 · 23 頁

青空文庫

胸をたたくにしても、聴診器をあてるにしても、腹をさするにしても、ひどく丁寧で、何かを探している鋭い心の眼がはたらいているように感ぜられた。

ベッドの上にねかせて、きわめてそっと胃袋のまわりをゆっくりと撫でまわしていたが、そのうちに「一寸右を下にしてみて下さい」という。そして右下にねかせながら、同じところを撫で廻し、今度は左下にして同じことをくりかえす。そういうことを二度ばかりくりかえしているうちに、この若い医者の顔は、ひどく真剣な怖い顔付になった。

「どうもへんだ。あなたは今朝、朝飯を何時に食いましたか。どれくらい食いましたか」

「八時頃です。御飯を軽く二杯と、味噌汁を一杯と、煮魚を一切れくらいでしょうか」

「そうでしょう。しかし今十時だから、その食物はまだ胃の中にあるはずなんだが。それだけの物が中にあると、右下にしたり、左下にしたりすると、その目方で胃袋が垂れ下がらねばならないのに、あなたの胃袋は、周囲の臓器との相対位置が、ちっともかわらないんです。胃の周囲にひどい癒着があるとより他に考えられませんね」という。

なるほど、これは重力を用いる実験である。