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ジストマたいじのはなし

ジストマ退治の話

中谷 宇吉郎

線上閱讀中谷 宇吉郎《ジストマ退治の話(ジストマたいじのはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,042 字 · 23 頁

青空文庫

「人間の身体のように複雑をきわめたものは、浅はかな学問の力などでは、どうにもなりません。医者はただ自然治療をそっと見守ってるだけですよ」などというと、さすが名医だというようなことになる。それほどでなくても、とにかく少し大乗的な話を入れないと、世間はなかなか名医の仲間には入れてくれない。

そういう工合で、一般には、物理学や化学の方が信用が厚くて、近代医学の方は、少なくもごく近年までは、あまり評判が良くなかった。しかし私は反対に、近代医学の方を、原子爆弾より十年くらいも前から信用して来た。原因は簡単で、自分の病気が医学のおかげで治ったからである。

話は蘆溝橋事件の前、昭和十一年の昔にかえるが、その年に北海道大学に初めて低温室が出来た。その中で早速雪の結晶の人工製作という、前から目星をつけておいた実験にとりかかった。ところが幸か不幸か、その実験が巧く行って、二カ月も経たぬうちに、最初の人工雪が一つ出来た。

それで私も助手の人たちも、夢中になってその実験に熱中した。それと運悪く、妻の大病と考古学をやっていた弟の死とがぶつかり、私もすっかり身体を痛めてしまった。