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ジロリのおんな

ジロリの女

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《ジロリの女(ジロリのおんな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 頁

青空文庫

私は、大浦博士の知らないヤス子の肉体を知っている。

私は然しそのほかに何一つとるに足らない人間にすぎない。大浦博士は、名医であり、教授であり、学者である。立派な風采をもっている。ひろい趣味をもっている。洗練されたマナーをもっている。

どうして、こうも嫉妬深い私であろうか。私はヤキモチはキライなのだ。然し私はいつも嫉妬に狂っている。

私はヤス子を誘う。今夜はダメですと云う。大浦先生と約束があると云う。又、ほかの誰かと約束があると云う。今日は家に用があると云う。一しょに夕食をとっても、それだけで帰ってしまう。

ヤス子はハッキリと私を見つめて返事をする。それは嘘はつきません、ということではなくて、こゝまではホントです、というように私には見える。そして、そこから先は、私は訊くことができない。

「ヤス子さん、あなたは恋愛したいと思いますか?」

「えゝ」

と、ハッキリ答えるのである。

「どんな人と?」

「一番偉い、立派な方」

「有名な人がお好きですか」

「有名な方は、ともかく才能ある方でしょう。女は有名が好きですわ。すべての方に好かれる人を、自分のものにしたがるのですわ」