輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
スウィスにっき
スウィス日記
辻村 伊助
線上閱讀辻村 伊助《スウィス日記(スウィスにっき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 216,275 字 · 410 頁
ヴァル・テリーナは、なお深く東北に走って山の奥、アッダの水の源に、モンテ・コンフィナーレ Monte Confinale、ティロールのオルトラー Ortler も、僅かな途のりであるが、私の乗った電車は、その渓から枝別れして、ポスキヤーヴォの谷底を、ベルニナさして向かうのである。乗客と云うのはやっぱり私一人、次の小っぽけな国境の停車場で、税関の検査があったが、窓からのぞいたばかりで、極めて簡単に済んでしまった。
こうして再びスウィスに入ると、電車は次第に山の間を登ってゆく、窓をあけて仰のくと、雪の傾斜は、雲の裾から逆落しに渓を圧して、頂は見えないがスカリノの氷河は、窓に近いらしい。が、渓には浅いながら春は来て、路ばたの草は緑に、菫、土筆、たんぽぽの黄にまじる白のサフランの、丘のうしろは切ったての崖が、雲の脚から谷底になだれ落ちて、今年の冬まではとても保ちそうにもない板張りの田舎家の、背戸のポプラのいく群は、露わながら緑が萌えて、リヴィエラの春、サハラの緑島、カムパニヤ、エミリヤ、ヴェネートォと、椰子の広葉とミルトゥスや月桂の黒ずんだ森に、徒に明るく蔽う蒼空をながめた旅の終りに、雲の暗い、この今日のスウィスの旅に急ぐのが、もの悲しくもまた、うれしくも思われたのである。