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スウィスにっき

スウィス日記

辻村 伊助

線上閱讀辻村 伊助《スウィス日記(スウィスにっき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 216,275 字 · 410 頁

青空文庫

である。

さて翌けの日、山村の日曜を想像して見たまえ。眠っているような小村の靄に、鳴りわたる会堂の鐘の音、アルヴの水も夢からさめたか、雪をもれて、かすかにそれとうなずかれる朝まだき。あすこに、この雪の下に、彼のウィムパーが眠っていると、朝飯もそこそこに、杖一つぶら下げた身軽にぶらり、その鐘の鳴る方へ雪路を分けてゆく、教会は停車場前、私の室のヴェランダからは、斜めに見える尖塔がそれで、墓は雪の中ながら、誰のわざかしおらしい花束も、雪をかずいて美しかった。どんよりと曇り日の空には、そこここと晴れ晴しい朝空が仰がれたが、山は深い雲の中で、只ほの白い渓の中に、鐘のねばかり鳴りわたる。朝空の雲の窓は、その鐘にさそわれて、南に動き西に揺れて、ある時は、その陰欝な扉の奥に、ああボッソンの蒼白い氷河をさえ仰ぐことができた! ただ思いがけない雲の真中に、これが私の初めて見た氷河であった。

たまらなくなって、深い雪の中をあたふたと、たとえば一尺でも山に近づこうとするように、ホテルの前は素通りにして、アルヴの橋を、水には眼をくれる暇もなく、つき当りを左に曲ってボッソンの方へかけつけた。