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デカルトといんようせいしん

デカルトと引用精神

戸坂 潤

線上閱讀戸坂 潤《デカルトと引用精神(デカルトといんようせいしん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,511 字 · 7 頁

青空文庫

古くダンテがイタリア語の父であるとされ、又降ってルターがドイツ語の完成者と云われるように、ルネ・デカルトはフランス語の恩人とされている。ダンテの『神曲』、ルターの『新約聖書』の翻訳に、その意味で比較すべきものは、『方法叙説』と呼ばれているあの Discours de la M※(アキュートアクセント付きE小文字)thode である(之は屈折光学と気象学と幾何学との後から書かれたものでこれ等の序説の意味をも有っている)。これはデカルトの母国語であるフランス語で書かれた殆んど最初の哲学書である。而も人の知る通り、最も貴重な思想的意義をもった哲学書である。

それ以前の学術書で、ラテン語で書かれずにフランス語で書かれたものは、一つか二つしかなかったと云われている。学術用語として無条件の権威のあったラテン語を用いずに、日常の俗語であるフランス語を使って哲学の根本問題を論じようとしたことには、吾々が今日想像する以上の重大意義がなければならなかったと共に、又想像以上の決意をも必要としたものであったろうことを、思って見ねばならぬ。古典的な著書を、著述された実際の雰囲気の中にありありと眼に浮べて見ようと試みたことのある人ならば、誰でもこの推定をしないわけには行かないだろう。