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ピストルのつかいかた

ピストルの使い方

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《ピストルの使い方(ピストルのつかいかた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 39,100 字 · 78 頁

青空文庫

私なんぞ、よくは分りはしませんけれど、目はその細工の生命です。それを彫ったものの、作人と一所に銘を入れるのは、お職人の習慣だと言いますもの。――近常さんのおもいでは、せめて一生に一度――お国のため、とまで言って下すった、県庁の課長さんへの義理、中絶はしても、資本を出した人への恩返し。……御先祖がたへの面目と、それよりも何よりも、恋女房の御新造さんへ見せたさに、わざと仏壇の蝋燭を提灯に、がたくり格子も瑠璃の扉、夜の雪の凍てた道さえ、瑪瑙の橋で出なすったのに……ほんとうにその時のお胸のうちが察しられます。

運八の女房さん――美術閣だから、奥さん――が、一人前、別にお膳を持って、自分で出ました。……ちょっと話があるんです……この奥さんは、もと藩の立派な武家のお嬢さんで、……近常さんの、若くて美男だった頃、そちらから縁談のあった事があるんですとさ、――土地の按摩はくわしいんですわね――(見染められたんだ、怪しからん。)――そう云って、お天狗は、それまでの気組も忘れて、肩を大揺りに、ぐたぐたしたのよ。

もっとも、横合から、運八のものになった事はお話しするまでもないでしょう。