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ピストルのつかいかた

ピストルの使い方

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《ピストルの使い方(ピストルのつかいかた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 39,100 字 · 78 頁

青空文庫

と揚って、流るる藍色の川を切って暗くした。

――町の東と西とに分れて、城の櫓と、巨刹の棟が見える。俗に魔の火と称えて、この山に棲む天狗が、遊山を驚かすために、ともすると影のない炎を揚げて、渠等の慌て騒ぐのを可笑がる……その寺の棟に寄った時は真の火である。城に近いのは空き煙だ、と言伝える。

ちょうど真中であった。森の砕けて、根の土を振うがごとく乱るる煙は。――

見当が、我が住む町内に外れても、土地の人には随所に親類も知己も多い。多津吉の同伴はこの岨路を、みはらしの広場下りに駆出した。

口早に、あらかじめ契った晩飯の場所と、火事は我が家、我が家には直面しない事と、久しぶりなる故郷の山に、心静に一人親むこととを言置いたのは言うまでもない。

駆出した中の婦が、広場の松を低く、ハタと留まって、前後左右を、男女のばらばらと散る間に、この峰の方を振返った。肩を絞って、胸を外らすと、遥に打仰いだ顔はやや蒼く、銀杏返しの鬢が引戦いで見える。左の腕に多津吉の外套を掛けていた。

意味は知れよう。

「構わない、構わない、打棄って――そこへ打棄って――」

多津吉は上から手を振った。