輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

線上閱讀梅崎 春生《ボロ家の春秋(ボロやのしゅんじゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,411 字 · 263 頁

青空文庫

その王将をつまみ上げ、その背中をしらべてみたい、そんな衝動がちらと蟹江の胸を走って、ふっと手が出そうになったのです。その時猿沢の落着いた声がもどってきました。

「そう。二百五十円だね。なにしろ王様だからね」

よっぽど二百五十円を出して、敵の王様を買い取ってやろうかと蟹江は思ったのですが、なにしろ勝負の賭け金が二百円ですから、その損得を考えて、やっと踏みとどまったのです。

傍で猿沢夫人が、大きなあくびをしながら、うんざりしたような声を出しました。

「まだ勝負がつかないの。ずいぶん長い勝負ねえ。あたしお先にやすませていただこうかしら」

――蟹江と猿沢の土曜日の会合は、近頃は大体こんなものです。こんな調子ですから、蟹江が猿沢の背中を見るのは、ちょっと何時のことになるか判りません。

でも、もう蟹江は、猿沢の背中は見ない方が、いいのではないでしょうか。猿沢の背中に痣があっても、蟹江は不幸になるし、ないとすれば、なおのこと不幸になるに違いありません。考えたり空想したりするだけで、実際には見ない方がいいようなものが、この世の中にはたしかにあるのです。『Sの背中』も、もはやそのひとつでしょう。