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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
線上閱讀梅崎 春生《ボロ家の春秋(ボロやのしゅんじゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,411 字 · 263 頁
彼は口に出して言った。
「こんなもの、誰が食ってやるものか」
新聞紙を四五枚ぐしゃぐしゃに丸め、菓子折を持って庭に出た。塵芥場に投げこんで、火をつけた。新聞紙は白い焔を立てて、ぼうぼうと燃え始めた。
「運転手の顔ねえ。どの運転手の顔だったかしら」
「そら。佐渡君の会でさ、いっしょにタクシーを拾っただろう」
一ヵ月ほど経って、上野の喫茶店で、彼は偶然に矢木に出会った。紅茶を飲みながら、その話を持ち出した。矢木は視線を宙に浮かせて、しばらく考えていた。
「ああ。あの時のね。あなたが白髪のことで、佐渡さんにからんだ夜の――」
「白髪?」
「ええ。佐渡さんに白髪が近頃ふえたのは、老い込んだ証拠だって、ずいぶんからんだじゃないですか。だから作品もダメになったって」
彼は首をかしげた。佐渡は彼と同年で、近頃妙に白髪がふえたのも事実である。しかしそれについて佐渡にからむなんて、彼には記憶もないし、想像もつかなかった。
「そんなことを、僕がやる筈がないよ。白髪と作品と関係づけるなんて、そんな理不尽な」
彼は記憶をさぐりさぐり言った。
「あいつが僕の酔い方を批評したんで、面白くなくなって、会場を出たんだ。