輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
線上閱讀梅崎 春生《ボロ家の春秋(ボロやのしゅんじゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,411 字 · 263 頁
そして俺は愕然とした。
俺は自分が呟いた言葉の内容に驚いたのではない。亢奮すれば人間はどんなことでも口走るものだ。俺が愕然としたのは、その言葉を現実に裏打ちするような兇暴なものが、その時俺の心の中にはっきり動いているのが判ったからだ。お前は笑うかも知れないが、闇屋に落ちるには俺は良識や教養があり過ぎる、と俺はその時まで漠然と己惚れていたのだ。俺は両手を外套のポケットに突っ込んで立ち止った。丁度其処が駅の前だった。この兇暴なものはなにか。それは何だろう。体の感じを手探りしているうちにハッと気がついたのだ。それは何だと思う。この外套なんだ。この外套がそれなんだ。
俺はその朝、またもとの俺の外套のつもりでそれを身体に着け、そして此処までやって来た。歩いていながら、どうもぴったりしない。何か食違ったもの、何かそぐわぬものを俺は、不透明な膜の向うに感じ続けていたのだ。この襟が頸に触れる感じ、手をポケットに突込む感じ、皆親しい感じだが同時に何処か手強くつっぱねる感じだ。暫く穿かない靴を穿くと足に食いつくな。それにも似ているが何処か違う。お前が暫く着たから型が変ったというせいじゃない。