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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
線上閱讀梅崎 春生《ボロ家の春秋(ボロやのしゅんじゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,411 字 · 263 頁
ズボンの折目からも二箇ばかり出て来た。
「へんだな。どこからこんなに忍び込んでいたのだろう」
男はそう言いながら一寸厭な顔をした。
それから僕等は喫茶店を出て、広場に面した小さな古着屋でその外套を売払った。あの取れかかっていた釦はその店で僕が引きちぎって、背広のポケットに収めた。
その夜、僕等は飲屋で先刻の蜆を出して味噌汁を作って貰い、それを肴に粕取焼酎を痛飲した。ぐでんぐでんに酔っぱらって、僕は彼と駅の前で手を振って別れた。
その後僕は彼に会わない。彼はその後平凡な闇屋になっただろうと思う。会いたい気持も別段起らない。
あの夜僕がポケットに収めた黄六角の釦は、別に用途もないから机の上に放って置いたら、先日下宿の子供が来て玩具にくれと言うからやってしまった。お弾きにして遊んでいるのを二三度見かけたが、この頃は見ないようである。もう飽きたんだろうと思う。