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リギさんじょうのいちや
リギ山上の一夜
斎藤 茂吉
線上閱讀斎藤 茂吉《リギ山上の一夜(リギさんじょうのいちや)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,621 字 · 14 頁
この「頂上」は、風が強く、未だ九月下旬というに僕は冬の外套を著ていた。その丘に三、四人の女が物を売っていた。多くは媼で渋い模様のある布をかぶっている。若い娘が一、二いて紅い豆しぼりのような模様の布をかぶっているが、頬が赤く、この高山の空気に生育した面持であった。これらの女どもは絵葉書だの、木細工の牛だの、笛だの、牛の頸につけている鈴の小さいのだの、駄菓子のようなものだの、そんなものを売っていた。僕はそのそばに行って、いろいろいじって見たが、余り元始的で、故郷の土産にするようなものは極めて尠なかった。小さい木製の牛をいじっていると、耳が突然除れたりした。これは膠が丈夫でないので除れたのであったが、僕は知らん振して多くの木製の牛の中にそれを交ぜてしまった。
太陽は黄色になって山嶽に近づくので、女どもはそろそろ帰り支度にかかった。女どもは僕らの旅舎の建っている、Rigi-Kulm に住んでいるのではなく、もっと山腹の方に住んでいる。女らの露店には鈴をつけた山羊も時々寄って来、白い牛、斑牛、黒牛なども寄って来るが、女らはそういう獣にはかまわずに、店を片付けて帰るのであった。