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ウィタ・セクスアリス

ヰタ・セクスアリス

森 鴎外

線上閱讀森 鴎外《ヰタ・セクスアリス(ウィタ・セクスアリス)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 頁

青空文庫

人が彼を畏れ憚る。それが間接に、僕の為めには保護になっていたのである。

僕はこの間接の保護を失わねばならない。そして頗る危険なる古賀の室へ引き越さねばならない。僕は覚えず慄然とした。

僕は獅子の窟に這入るような積で引き越して行った。埴生が、君の目は基線を上にした三角だと云ったが、その倒三角形の目がいよいよ稜立っていたであろう。古賀は本も何も載せてない破机の前に、鼠色になった古毛布を敷いて、その上に胡坐をかいて、じっと僕を見ている。大きな顔の割に、小さい、真円な目には、喜の色が溢れている。

「僕をこわがって逃げ廻っていた癖に、とうとう僕の処へ来たな。はははは」

彼は破顔一笑した。彼の顔はおどけたような、威厳のあるような、妙な顔である。どうも悪い奴らしくはない。

「割り当てられたから為方がない」

随分無愛想な返事である。

「君は僕を逸見と同じように思っているな。僕はそんな人間じゃあない」

僕は黙って自分の席を整頓し始めた。僕は子供の時から物を散らかして置くということが大嫌である。学校にはいってからは、学科用のものと外のものとを選り分けてきちんとして置く。この頃になっては、僕のノオトブックの数は大変なもので、丁度外の人の倍はある。