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せんきゅうひゃくよんじゅうろくねんのぶんだん
一九四六年の文壇
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《一九四六年の文壇(せんきゅうひゃくよんじゅうろくねんのぶんだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 27,325 字 · 54 頁
ているものにすぎないということを痛切に実感すると思う。ですから一部の批評は高見順の「わが胸の底のここには」には頭が下るといっているけれども、モティーヴが腹にすわっていない、ふらふらした作品です。書こうとするものの本質がつかまえられきっていないのです。
今日たくさんの人たちが、のほほんとして「あの時はあの時のこと」と白を切っているような文学の態度を示しています。それにたいする一つの抗議として高見さんの小説の態度は買われるのでしょうし、作者として敏感にそういう要求をもつ今日のインテリゲンツィアの心理に反映して着手された作品でしょう。しかし自己剔抉ということも主観の枠の中でされると、枠のひずんだとおりにひずむしかないという意味深い一つの例だと思います。今日の歴史に生きるには、それに先行する時代から受けた苦しみそのものの中に沈潜して、そこから自分たちのこれからの新しい発展を辿りださねばならないという気持が、広汎にあります。そして、自分たちの経験を発展の母胎と見、それにいちおうは執しようという心持は、民主主義文学のいわれている今日の日本で独特の混乱の源泉となりました。