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かじとポチ
一房の葡萄
有島 武郎
線上閱讀有島 武郎《一房の葡萄(かじとポチ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 23,753 字 · 48 頁
ぼくがおこしに行く前に、ポチは離れに来て雨戸をがりがり引っかきながら、悲しそうにほえたので、おとうさんもおかあさんも目をさましていたのだとおかあさんもいった。そんな忠義なポチがいなくなったのを、ぼくたちはみんなわすれてしまっていたのだ。ポチのことを思い出したら、ぼくは急にさびしくなった。ポチは、妹と弟とをのければ、ぼくのいちばんすきな友だちなんだ。居留地に住んでいるおとうさんの友だちの西洋人がくれた犬で、耳の長い、尾のふさふさした大きな犬。長い舌を出してぺろぺろとぼくや妹の頸の所をなめて、くすぐったがらせる犬、けんかならどの犬にだって負けない犬、めったにほえない犬、ほえると人でも馬でもこわがらせる犬、ぼくたちを見るときっと笑いながら駆けつけて来て飛びつく犬、芸当はなんにもできないくせに、なんだかかわいい犬、芸当をさせようとすると、はずかしそうに横を向いてしまって、大きな目を細くする犬。どうしてぼくはあのだいじな友だちがいなくなったのを、今日まで思い出さずにいたろうと思った。
ぼくはさびしいばかりじゃない、くやしくなった。妹と弟にそういって、すぐポチをさがしはじめた。