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いっとう
一灯
線上閱讀太宰 治《一灯(いっとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,052 字 · 7 頁
けれども、いまは、はにかんでばかりも居られない。黙って、まごついて、それ故に、非国民などと言われては、これ以上に残念の事は無い。たまったものでない。私は、私の流儀で、この機会に貧者一燈を、更にはっきり、ともして置きます。
八年前の話である。神田の宿の薄暗い一室で、私は兄に、ひどく叱られていた。昭和八年十二月二十三日の夕暮の事である。私は、その翌年の春、大学を卒業する筈になっていたのだが、試験には一つも出席せず、卒業論文も提出せず、てんで卒業の見込みの無い事が、田舎の長兄に見破られ、神田の、兄の定宿に呼びつけられて、それこそ目の玉が飛び出る程に激しく叱られていたのである。癇癖の強い兄である。こんな場合は、目前の、間抜けた弟の一挙手一投足、ことごとくが気にいらなくなってしまうのである。私が両膝をそろえて、きちんと坐り、火鉢から余程はなれて震えていると、
「なんだ。おまえは、大臣の前にでも坐っているつもりなのか。」と言って、機嫌が悪い。
あまり卑下していても、いけないのである。それでは、と膝を崩して、やや顔を上げ、少し笑って見せると、こんどは、横着な奴だと言って叱られる。