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さんりょうせいべえとめいばあさづき

三両清兵衛と名馬朝月

安藤 盛

線上閱讀安藤 盛《三両清兵衛と名馬朝月(さんりょうせいべえとめいばあさづき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,144 字 · 17 頁

青空文庫

すわこそ、主君あやうし!

「はっ」

朝月をほめられて、清兵衛は、うれしくてたまらない。陣中を大声でどなり、眠っている者を起こして歩いて、うまやにかけもどるなり、朝月の平首へかじりつくようにして、

「おい、よく知らせてくれた。やっぱり明兵が、夜討ちをかけるらしいのだ。殿から貴様はほめられたぞ」

清兵衛は、自分のほめられたより、うれしくてならなかった。そして、その鞍の上にひらりと打ちまたがって塀の方へゆくと、月下に鎧の袖をならす味方が、黒々と集まって静まりかえっている。

すわこそ、主君あやうし!

夜明けに間もなかった。月がすッと山のかなたに落ちていったと思うと、林や谷のあたりから、天地もくずれるばかりのときの声が上がって、金鼓、銅鑼の音がとどろきわたった。明軍は月の入りを待っていたのである。うしおのように、柵の外までおしよせてくると、待ちかまえていた日本軍――浅野幸長、太田飛騨守、宍戸備前守以下、各将のひきいる二万の軍兵は、城門サッとおしひらき、まっしぐらに突撃した。不意をおそうつもりだった明軍は、かえって日本軍に不意をうたれたかたちで、

「これは――」

とばかり、おどろきあわて、見ぐるしくも七、八町みだれしりぞき、清水という川のところでやっとふみとどまった。