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みさきまちのはら
三崎町の原
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《三崎町の原(みさきまちのはら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,292 字 · 5 頁
十一月の下旬の晴れた日に、所用あって神田の三崎町まで出かけた。電車道に面した町はしばしば往来しているが、奥の方へは震災以後一度も踏み込んだことがなかったので、久振りでぶらぶらあるいてみると、震災以前もここらは随分混雑しているところであったが、その以後は更に混雑して来た。区劃整理が成就した暁には、町の形がまたもや変ることであろう。
市内も開ける、郊外も開ける。その変化に今更おどろくのは甚だ迂濶であるが、わたしは今、三崎町三丁目の混雑の巷に立って、自動車やトラックに脅かされてうろうろしながら、周囲の情景のあまりに変化したのに驚かされずにはいられなかった。いわゆる隔世の感というのは、全くこの時の心持であった。
三崎町一、二丁目は早く開けていたが、三丁目は旧幕府の講武所、大名屋敷、旗本屋敷の跡で、明治の初年から陸軍の練兵場となっていた。それは一面の広い草原で、練兵中は通行を禁止されることもあったが、朝夕または日曜祭日には自由に通行を許された。しかも草刈りが十分に行き届かなかったとみえて、夏から秋にかけては高い草むらが到るところに見出された。北は水道橋に沿うた高い堤で、大樹が生い茂っていた。