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みうらろうじんむかしばなし
三浦老人昔話
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《三浦老人昔話(みうらろうじんむかしばなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 113,637 字 · 224 頁
暮春から初夏にかけては、大久保の躑躅が最も早く、その次が亀戸の藤、それから堀切の菖蒲という順番で、そのなかでは大久保が比較的に交通の便利がいゝ方であるので、下町からわざ/\上ってくる見物もなか/\多かった。藤や菖蒲は単にその風趣を賞するだけであったが、躑躅には色々の人形細工がこしらえてあるので、秋の団子坂の菊人形と相対して、夏の大久保は女子供をひき寄せる力があった。
ふだんは寂しい停車場にも、きょうは十五六台の人車が列んでいて、つい眼のさきの躑躅園まで客を送って行こうと、うるさいほどに勧めている。茶屋の姐さんは呼ぶ、車夫は附き纏う、そのそう/″\しい混雑のなかを早々に通りぬけて、つゝじ園のつゞいている小道を途中から横にきれて、おなじみの杉の生垣のまえまで来るあいだに、私はつゝじのかんざしをさしている女たちに幾たびも逢った。
門をあけて、いつものように格子の口へゆこうとすると、庭の方から声をかけられた。
「どなたです。すぐに庭の方へおまわりください。」
「では、御めん下さい。」
わたしは枝折戸をあけて、すぐに庭先の方へまわると、老人は花壇の芍薬の手入れをしているところであった。