輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
シャンハイされたおとこ
上海された男
牧 逸馬
線上閱讀牧 逸馬《上海された男(シャンハイされたおとこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,665 字 · 18 頁
錨を巻く音がした。岩壁の一外国船に黒地に白を四角に抜いた出帆旗が翻っていた。一眼でそれが諾威PN会社の貨物船であることを為吉は見て取った。出帆に遅れまいとする船員が三人、買物の包みを抱えて為吉の前を急足に通った。濃い咽管煙草の薫りが彼の嗅覚を突いた。と、遠い外国の港街が幻のように為吉の眼に浮んで消えた。彼は決心した。
「靴擦れで足が痛え――」ひょいと踞み乍ら力任せに為吉は刑事の脚を浚った。
夢中だった。呶声を背後に聞いたと思った。通行人を二人程投げ飛ばしたようだった。そして縄梯子に足を掛けようとしている外国船員のところへ一散に彼は駈付けた。
「乗せて呉れ!」と彼は叫んだ。船員達は呆気に取られて路を開いた。
「乗せて行って呉れ、悪い奴に追っかけられてる。何処へでも行く、何でもする。諾威船なら二つ三つ歩いてるんだ」船乗仲間にだけ適用する英語を為吉が流暢に話し得るのがこの場合何よりの助けだった。
「ぶらんてんか、手前は」
船側の上から一等運転士が訊いた。
「ノウ、甲板の二等です」と為吉は答えた。
暫く考えた後、
「宜し、乗せて行く」
猿のように為吉は高い側を攀じ登って、料理場の前の倉庫口から側炭庫へ逃げ込んだ。