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うえのかいわい
上野界隈
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《上野界隈(うえのかいわい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,435 字 · 11 頁
一とたびその石段を切通しへ下りたとき、一とあしその池のそばを広小路のほうへ出抜けたとき、そこにすぐよこたわっているのは輝しい街衢である。整然とごった返した近代的大街衢である。疾駆する電車、自動車、自転車、貨物自働車、その間を縫ってつづく人の流れ、それに伴奏する建物だの広告塔だのの、雑多な色彩、雑多な様式。……『雁鍋』の屋根に飛んでいた漆喰細工の雁のむれを、不忍から忍川の落込む際の「どん/\」の水の響きを、ああ、われわれはいまどこにもとめよう。――そこにはもう『霜夜鐘十字辻筮』もなければ『天衣紛上野初花』もない、『黒手組曲輪達引』もない……
が、一つ、ただ一つそこに欠けているものがある。「知的な美しさ」である。――という意味は、必ずしてその大通りに、ただ一けんの雑誌店をさえみ出すことが出来ないという謂でもない。そうしてまた、だるま、米久、世界、そうしたいうところの大衆的の飲食店ばかりすさまじく軒を並べているという謂でもない。……