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ふこう

不幸

梶井 基次郎

線上閱讀梶井 基次郎《不幸(ふこう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,060 字 · 8 頁

青空文庫

火鉢の火に被さった白い灰が崩れおちた。

それが近付いて来ると共に彼女の心構えは皆裏切られた。第二の望み、それが主人の帰る足音であるという願いもかき消されてしまった。その冴えた響きはだんだん微かになって、一しきり強く吹きつけて来た風の音がした後は、四囲は以前のような、夜の更けてゆく音に帰ってしまった。

夫の帰りも正規よりは遅かった。しかし不検束な主人はその正規の時間に帰って、正規のおしきせの晩酌で満足して寝ることは稀であった。

彼女はとにかく会社へ電話をかけて主人を尋ねて相談しなければならないと思った。

それから、彼女達の一家がこちらへ引移る前にしばらく仮泊していた品川の若木屋という旅館へ電話をかけて見ようと思って、彼女は近所の出入の酒や食糧品を売っている武蔵屋へ電話を借りに出ようとした。

外はまた一層寒くなっていた。雲の間から大きな星が強い蒼白い光を放っていた。

彼女は粗末な首巻の内に首をすくめながら、百に一つか、千に一つかと思われる、その旅館へ子供達が遊びに行ったということの蓋然性を、さまざまにはかりながら、凍てついた道を急いだ。

彼女が出て行ってまだ五分とたたない部屋の中は、細められた洋燈の光が神秘にあたりを照し出して、時計の文字板が八時十分過ぎを示していた。