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『ケプロン・くろだのこうそう』について

中谷宇吉郎集 第八巻

中谷 宇吉郎

線上閱讀中谷 宇吉郎《中谷宇吉郎集 第八巻(『ケプロン・くろだのこうそう』について)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 85,890 字 · 178 頁

青空文庫

金鱗湖

別府の裏側、由布山系の峠を越したところに、由布院という盆地がある。

ここは温泉もあり、最近だいぶ発展したが、以前はひどい山奥であった。もう四十年以上も昔の話であるが、中学時代に、ここを訪ねたときは、草鞋がけで、歩いて行ったものである。朝暗いうちに、別府を立ったが、向こうへ着いたときは、夕方すっかり暗くなっていた。

ここに金鱗湖という小さい池がある。その湖はんに一軒だけ木賃宿があって、そこで一泊した。障子をあけると、池の面に月がさし、銀色に光っていたのをおぼえている。

それよりも強く印象に残っているのは、大きい鯉が、無数にいたことである。五十センチ以上もある大きい鯉が、群れをなして泳いでいた。養魚場の池そっくりであった。

きいてみたら、これは全部天然の鯉であって、別に養殖しているのではなかった。捕る人がないので、自然に増えたのだということであった。

ここの鯉は、鱗が金色に光っているのが、特徴であって、それで金鱗湖という名前もついたわけである。

これは、昔の良い時代の話であって、その後道路ができ、自動車が行くようになってからは、もちろんそんな鯉は全部捕られてしまった。