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ちちをさす
乳を刺す
邦枝 完二
線上閱讀邦枝 完二《乳を刺す(ちちをさす)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,474 字 · 35 頁
「はい、厄年でございます」
父親の声に、丁寧に頭を下げたのは、結綿の髪に、桃色の手絡をかけた、姉に似たキリョウよし、しかもなかなかのしっかり者らしかった。
「その次に居りますのが、手代の常吉で、行く行くは、お春のムコにいたしまして、この見世を継がせたいと思って居ります。子供の時から、奉公いたして居りまして、まことによく働いてくれますので……」
常吉は頭を赤らめて、両手をついたが、常々それと決めていて、何の感じもないのか、お春は姉の方を見つめたまま、顔色も変えなかった。
後は田舎から出て来て間もないような、小僧の民吉と松三郎。これには留五郎も伝七も、眼をひかれた様子はなかった。
「手前共は、地味な商売でございまして、わたくしがまだおもに働いて居りますところから、これくらいの人数で、十分やっていけますので。……台所をやらせて居りますのが、一番末に座って居ります、下女のおみねでございます。十八になりますが、一昨年、房州から雇い入れました、正直者でございます」
きまり悪げに、眼を伏せているおみねは、女中のこととて、地味な身なりはしているが、肩も丸味を帯び、胸元も高く、ときどき留五郎の方を見る顔には、何となく色気があって、一応男の眼をひく女であった。