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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《二つの庭(ふたつのにわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 頁
「そんなことはないっていってるじゃないか」
「いいえ、おかくしになったって駄目ですよ」
日野さよ子が来たと聞いたら、泰造が、そうか、というなり、さっき帰ったときにもう入浴をすました風呂へまたとび込んだ、というのであった。伸子は、半信半疑で、変な話だと思ってきいた。母が、はしゃぐようにしてくりかえしていうほどおかしくもなかった。
伸子はそのときのことを、母の不自然なほど陽気だった笑い声までつれて思い出した。そして、父はいま越智に対して、どなりつけた。――夫婦の生活というもの、男と女との生活というものが、父母という関係から引きはなれて伸子にかえりみられた。しっかりつかまえてそれを解決してしまうにしては、頭も尻尾もない奇妙なもやもや。生活の中から湧き出る感情の明暗は、伸子が佃と生活した数年間にも充満して、ついにその生活をふきとばしてしまった。それが、もう三十年も生活して来ている親たち夫婦の間にもある。夫婦のなかにあるばかりでなく、伸子と素子との生活感情にも、形をかえてしのび入って来ている。十六歳の伸子は真剣に、こんなに喧嘩をする父と母とが、次々に赤坊を生んで、その赤坊は自分が守りしなければならないという事実について、どうしても納得できなかった。