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しつらくえんさつじんじけん
二十世紀鉄仮面
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《二十世紀鉄仮面(しつらくえんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 38,489 字 · 77 頁
その翌日だった。法水は開演を数日後に控えている、鰕十郎座の舞台裏に姿を現わした。午前中の奈落は人影も疎らで厨川朔郎は白い画室衣を着て、余念なく絵筆を動かしている。その肩口をポンと叩いて、
「やあ、お芽出度う。時に厨川君、君は昨日柱時計を修繕したのかい?」
「何んです? 僕には一向に呑み込めませんがね」朔郎は怪訝な面持で云った。
「でも、あの日から君の時計の時鳴装置が、どんな時刻にも、一つしか打たなくなった筈だがね。それが、今日君の留守中行ってみると、何時の間にか普通の状態に戻っているんだ。しかし、君は恐らく口を噤んでしまうだろうから、僕が代って云う事にしよう」と最初法水は、極めて平静な調子で云い出したのであったが、それにつれて、朔郎の唇に現われた痙攣が次第に度を昂めて行った。
「それには、最初準備行為が必要だったのだよ。君は自分の室の時計に綿様のものを支って、時報を鳴らなくした筈だったね。そして、七時前に室を出て、裏木戸から薬師堂へ行ったのだが、それ以前に留守の室の時計と君の手に代るものを、柳江の書斎に作って置いたのだ。所で、君の偽造不在証明を分解しよう。