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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
線上閱讀壺井 栄《二十四の瞳(にじゅうしのひとみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 頁
「あーら、いいこと。百合の花の絵がついとるの。ああ、赤ちゃんの名前もそれなの?」
すると松江は、恥らいとよろこびを、こんどはからだじゅうで示すかのように肩をくねらせて、
「まだ、わからんの」
「ふーん。わかりなさいよ。ユリちゃんにしなさい。ユリコ? ユリエ? 先生、ユリエのほうがすきだわ。ユリコはこのごろたくさんあるから」
松江はこっくりうなずいて、うれしそうに先生の顔を見あげた。松江の目がこんなにもやさしいのを、はじめて見たような気がして、先生はその長いまつ毛におおわれた黒い目に、じぶんの感情をそそいだ。仁太のことはもう、ひとまず流して、心はいつかなごんでいた。松江にとってもまた、その数倍のよろこびだった。先生にいわなかったけれど、お昼の弁当のとき、松江は大きな父の弁当箱を、小ツルやミサ子から笑われたのである。それで、彼女はひとりみんなからはなれていたのだ。しかし今は、そのしょげた気持も朝露をうけた夏草のように、元気をもりかえした。じぶんだけが、とくべつに先生にかまわれたようなうれしさで、これはないしょにしておこうと思った。だのにその日、帰り道で彼女はつい口に出してしまった。