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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
線上閱讀壺井 栄《二十四の瞳(にじゅうしのひとみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 頁
「ふーん。竹一さんは?」
「ぼくはあととりじゃけんど、ぼくじゃって軍人のほうが米屋よりえいもん」
「そうお、そうかな。ま、よく考えなさいね」
うかつにもののいえない窮屈さを感じ、あとはだまって男の子の顔を見つめていた。正が、なにか感じたらしく、
「先生、軍人すかんの?」ときいた。
「うん、漁師や米屋のほうがすき」
「へえーん。どうして?」
「死ぬの、おしいもん」
「よわむしじゃなあ」
「そう、よわむし」
そのときのことを思いだすと、今もむしゃくしゃしてきた。これだけの話をとりかわしたことで、もう教頭に注意されたのである。
「大石先生、あかじゃと評判になっとりますよ。気をつけんと」
――ああ、あかとは、いったいどんなことであろうか。この、なんにも知らないじぶんがあかとは――
寝床の中でいろいろ考えつづけていた大石先生は、茶の間にむかって呼びかけた。
「おかあ、さん、ちょっと」
「はいよ」
立ってはこずに襖越しの返事は、火鉢のわきにうつむいた声であった。
「ちょっと相談。きてよ」
足音につづいて襖があくと、指ぬきをはめた手を見ながら、
「わたし、つくづく先生いやんなった。三月でやめよかしら」