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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
線上閱讀壺井 栄《二十四の瞳(にじゅうしのひとみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 頁
小さいからだをツブテのように走らせながら、彼女の心には一つのたのしみがふくらんできた。それは指きりしてもよいといった母のことばだった。産婆さんの家は本村のとっつきにあった。帰りは途中まで自転車にのせてくれ、少し上り坂のところまでくると、年とった産婆さんは自転車をとめ、
「おまえは、ここでおりてくれ。一刻も早ういかんならん」
松江はこっくりして、自転車のあとから走った。自転車はみるみる遠ざかり、すぐに山の中へ消えていった。大石先生の自転車いらい、女の自転車もようやくはやりだして、今ではもう珍らしくはなかったが、それだけに走りさった産婆さんの自転車を見て、毎日朝早く起きて、てくてく、町まで歩いて仕事にゆく父親にも、自転車があれば、どれほど助かるかと、ふと思った。
走って帰ると、もう赤ん坊は生まれていた。いそがしそうに襷がけで水をくんでいたよろずやのおばさんは、松江を見るなりいった。
「マッちゃんよ、お前、えらかろうが、大いそぎで釜の下たいておくれ」
バケツのまま釜に水をあけてから、小声で、
「こんまい女の子じゃ。月たらずじゃといな。でも、ええじゃないか、なあマッちゃん。