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ぼうれいホテル
亡霊ホテル
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《亡霊ホテル(ぼうれいホテル)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,706 字 · 20 頁
然し――ゆうべこのホテルへ着いた時、ロビイで妹の友達にみつかったそうで、それで妹が」
「否々、僕はそれを責めているんじゃない、寧ろ妹さんの行方不明になった事が、僕のためには重大な役に立った事を感謝したいくらいなんだ」
「――と、仰有いますと」
「妹さんは必ず無事に帰るよ」
博士の言葉は伊藤青年を愕かした。
「それは本当ですか、先生」
「科学者は根拠の無い事は言わんさ、――だから安心して僕のする事を見てい給え」
博士はそう云って時計を見た。
「まだ九時前だね。宜しい、――君はお家へ電話をかけて、妹さんは此方へ泊ることになったと知らせてあげるんだ。お母さんに心配をかけると不可んからな、それが済んだら暢くり寝て宜しい」
「それで妹の事は……?」
「僕が引受けたと云っているじゃないか、それより君は亡霊に喰われぬ要心でもするが宜い。――じゃあお寝み」
何か仔細ありげな博士の様子を見て、伊藤青年は兎も角云われた通り自分の部屋へ戻った。
母に偽りの電話をかけて置いて、寝台へあがったが中々眠れる筈はない。――妹は一体どうしたのか、どんな変事があったのか、それも何より気懸りであるし、又ゆうべ聞いた向うの部屋の亡霊の声も妙に頭へひっ掛って来る。