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じんせいろんノート

人生論ノート

三木 清

線上閱讀三木 清《人生論ノート(じんせいろんノート)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,023 字 · 143 頁

青空文庫

今日の良心とは幸福の要求である、と。社会、階級、人類、等々、あらゆるものの名において人間的な幸福の要求が抹殺されようとしている場合、幸福の要求ほど良心的なものがあるであろうか。幸福の要求と結び附かない限り、今日倫理の概念として絶えず流用されている社会、階級、人類、等々も、何等倫理的な意味を有し得ないであろう。或いは倫理の問題が幸福の問題から分離されると共に、あらゆる任意のものを倫理の概念として流用することが可能になったのである。幸福の要求が今日の良心として復権されねばならぬ。ひとがヒューマニストであるかどうかは、主としてこの点に懸っている。

幸福の問題が倫理の問題から抹殺されるに従って多くの倫理的空語を生じた。例えば、倫理的ということと主体的ということとが一緒に語られるのは正しい。けれども主体的ということも今日では幸福の要求から抽象されることによって一つの倫理的空語となっている。そこでまた現代の倫理学から抹殺されようとしているのは動機論であり、主体的という語の流行と共に倫理学は却って客観論に陥るに至った。幸福の要求がすべての行為の動機であるということは、以前の倫理学の共通の出発点であった。