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じんせいろんノート

人生論ノート

三木 清

線上閱讀三木 清《人生論ノート(じんせいろんノート)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,023 字 · 143 頁

青空文庫

笑は動物にはない人間的な表情であるとすれば、懐疑と笑との間に類似が存在するのは自然である。笑も我々の感情を浄化することができる。懐疑家の表情は渋面ばかりではない。知性に固有な快活さを有しない懐疑は真の懐疑ではないであろう。

真の懐疑家はソフィストではなくてソクラテスであった。ソクラテスは懐疑が無限の探求にほかならぬことを示した。その彼はまた真の悲劇家は真の喜劇家であることを示したのである。

従来の哲学のうち永続的な生命を有するもので何等か懐疑的なところを含まないものがあるであろうか。唯一つの偉大な例外はヘーゲルである。そのヘーゲルの哲学は、歴史の示すように、一時は熱狂的な信奉者を作るが、やがて全く顧みられなくなるという特質を具えている。この事実のうちに恐らくヘーゲルの哲学の秘密がある。

論理学者は論理の根柢に直観があるという。ひとは無限に証明してゆくことができぬ、あらゆる論証はもはやそれ自身は論証することのできぬもの、直観的に確実なものを前提し、それから出立して推論するといわれる。しかし論理の根柢にある直観的なものがつねに確実なものであるという証明は存在するであろうか。