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にんげんさんすいずまき

人間山水図巻

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《人間山水図巻(にんげんさんすいずまき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,343 字 · 21 頁

青空文庫

たれかがいま人間性のうちの「盗」という一部分を研究対象としてみたら、近頃ほどその資料に豊富な世間はないだろう。暗黒期といわれた過去の応仁、永正の年代でも、よも今日ほどであったかどうか。だがこういう国家状態のときのこうした現象は、人間の住むところ洋の東西を問わないようだし、またこんな混濁の底から実は必死な次代の良心が萠芽しつつあることも、史に徴せば期待されないことでもない。

明日は何うなる世かと、時の人々を暗澹とさせた応仁、文明の下からでも、たとえば足利水墨の絵画や、後の生活様式を規矩する工芸が生れていたし、五山の宗教や社会道義の真摯な自覚もうながされていた。珠光も一休も雲舟もそうした「闇の世代」の人々ではあった。だから一概に今を悲観するにはあたらないし、世相の「悪」だけを見て、見えない「善」を否定するのは、過去において「善」のみを肯定して一切の「悪」を無視したのと同じ間違いの因になろう。むしろ、裏悪の世よりは、表悪裏善の今日のほうが良い未来を約す可能の多い世といえないこともないのである。

いやでも応でも、宇宙は刻々に易るという法則に立つ易学を生んだ隣邦中国では、さすがに世の転変には馴れぬいていたものか、古来盗児に関する挿話は今の日本にも負けないほど多い。