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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《仇討姉妹笠(かたきうちきょうだいがさ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 80,178 字 · 159 頁

青空文庫

「馬鹿者!」

怒号して拳を固め、猿を地上へ叩き落とし、主税は猛然と躍りかかった。

だが、何と猿廻しの素早いことか、こんもり盛り上っている山査子の叢の、丘のように高い裾を巡って、もう彼方へ走っていた。

すぐに姿が見えなくなった。

(きゃつこそ猿だ! なんという敏捷さ!)

主税は一面感心もし、また一面怒りを感じ、憮然として佇んだが、気がついて地上へ眼をやった。

叩き落とした猿のことが、ちょっと気がかりになったからである。

木洩れの月光が銀箔のような斑を、枯草ばかりで青草のない、まだ春なかばの地面のあちこちに、露を光らせて敷いていて、ぼっと地面は明るかったが、猿の姿は見えなかった。

(たしかこの辺りへ叩き落としたはずだが)

主税は地面へ顔を持って行った。

「あ」

声に出して思わず言った。

小独楽が一個落ちているではないか。

主税は袖を探ってみた。

袖の中にも小独楽はあった。

(では別の独楽なのだな)

地上の独楽を拾い上げ、主税は眼に近く持って来た。その独楽は大きさから形から、袖の中の独楽と同じであった。

「では」と呟いて左の掌の上で、主税は独楽を捻って廻し、月光の中へ掌を差し出し、廻る独楽の面をじっと見詰めた。