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こんにちのぶんがくのてんぼう

今日の文学の展望

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《今日の文学の展望(こんにちのぶんがくのてんぼう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 43,109 字 · 83 頁

青空文庫

「良心」「真理」「真実」論が、蔓延した。

この混乱と没規準とが頂点に達した一九三四年後半、上述のような混迷した芸術至上主義、人間的文学論に飽き足りない一団の批評家、作家によって、一つの文学的気運が醸し出された。舟橋聖一、豊田三郎、小松清等の諸氏によって提唱されはじめた「行動主義文学」の理論である。

雑誌『行動』も発刊され、「行動主義」文学の提唱者は、「不安の文学」という合言葉の代りに、生活と文学とにおける「能動精神」の主張を以て現れたのである。

煩瑣、無気力であった文学の袋小路は、やっと広く活々とした大路へ通じる一つの門を見出したかのようであったが、ここにも亦、複雑な日本の情勢は複雑な文学の諸問題を露出した。由来、舟橋氏等によって提唱されはじめた能動精神、行動主義文学という言葉は、当時フランス文壇の一部、主として新フランス評論(N・R・F誌)による人々ラモン・フェルナンデス、アンドレ・マルロオ等によって唱えられていた「行動のヒューマニズム」を小松清氏の訳語に従って適用したものである。

ヨーロッパ大戦後の文学を支配していた心理分析、潜在意識の生活を追究する唯心的な文学は、一九二九年のヨーロッパの大恐慌とその社会事情の変化によって別な人間生活の総体において表現しようと欲する文学運動に道を拓いた。