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こんにちのぶんがくのてんぼう

今日の文学の展望

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《今日の文学の展望(こんにちのぶんがくのてんぼう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 43,109 字 · 83 頁

青空文庫

の多難な道の上にこの小冊子の著者が撒いている細菌の本質を観破せず、或は、観破せざるが如きうちにおのずから、自身の真理追究の姿をも一致せしめているかのように見うけられる。

文芸懇話会が、文学の隆盛のための組織としてはそれ自身矛盾を包んでいることは既に明らかにされたのであったが、一九三七年という年は、更に建国祭を期して文化勲章が制定せられ、帝国芸術院というものが設立され、文芸懇話会は創立四年目に発展的解消をとげて、新日本文化の会として現れた。

文学の論議が、これ等の文化組織の設立に前後して、異様な一方性をもって政論化されて来たことは一つの画期的特色である。文学と大衆との無批判性、大人の文学、文学における日本的なものの強調等は、文学の全体としての健全な発展のために自省され、再評価されるべき範囲を脱し、文学を論じつつ、その論調を文学以外の規準で律するような危険を示して来た。批評文学は、昨年既に批評家自身によって随筆化されたと云われていたが、ここに到って一層その理論的骨格を挫かれて来た。一方的な飛躍は、遂に近代世界の文学が永い努力の蓄積によってかち得て来た文学評価における科学性の意義の抹殺に到達したのである。