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えせものがたり
似而非物語
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《似而非物語(えせものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 31,817 字 · 64 頁
三
と父親は云った。どんな怠け者にも勤まる御用だに。
杢助はほぼ諒解した。村の娘たちの中にはそれとなくほのめかす者もいるし、もっと大胆に、積極的に誘惑する者もあった。およそ見当はついていたので、彼はふきげんにそっぽを向いて云った。
――つまらねえ、おらまっぴらだ。
彼には「お登女さま」の産れるわけがわかった。代々そのようにして、極秘のうちにお登女さまは産れるのであった。そして、黒門を尊崇し畏れている村人たちは、その「役」に当った者はもちろん、うすうす感づいた者も、決してこの秘密にはふれないのであった。
百助はわが子をくどいた。その役はさして骨の折れるものではなかったし、黒門の権威にはそむけなかった。杢助は承知しなかった。父のたちばには同情したけれども、彼は面倒くさいことは嫌いであった。どんな意味ででも、自分の意志に反して躯を使うようなことは、御免蒙るのであった。
こうして、杢助はふいと村から出奔し、まる四十年のあいだ行衛が知れなかった。
三
「あしかけ四十一年になるだ、あれはおらが二十の年でよ」
弥市が云った。
「おら去年の夏に本卦返りをしただからよ、四十年てえばおめえ、……その、どこでなにょうしてただね、ずいぶん世間をひろく見て来ただろうし、金もしっかり拵れえたろうしよ、おめえ、……まだくる眼が起こるだかえ」